小説

今日は思ったより寒くなかった。最寄り駅のホームで感じた、昨日の寒さは0度近くで、真冬という感じだった。

おしゃれがしたい。ミユキは思った。最近寒いせいでダウンコートにジーンズの格好ばかりしている。昨日駅ビルの雑貨屋でかわいいネイルを買って塗ったのに、服装に全然釣り合っていない。せっかく可愛いネイルなのに服装に合ってないせいでダサく見える。萎えて落としたくなってきた。

なんだか気分が下がっていると快特電車がきたので乗車する。

最近気づいたことだが、冬用のズボンやスカートをあまり持ってない。夏服ならあるんだけど。だからいつも同じような服装になりがちだ。

去年のクリスマスプレゼントとして自分にスーツを買った。私服を選ぶのが面倒ならスーツを着ればなんとなくかっこよく見えるのではないか、そう思った。パンツスタイルで、ポロのネクタイ、クリスチャンディオールの金色のネクタイピン。ちょっと成金息子みたいだ。

品川に電車が到着するとアナウンスが聞こえ、電車は停車した。下車する。

耳につけているヘッドホンからはゴールデンボンバーの抱きしめてシュバルツが流れている。キリショーの声は嫌いじゃない。メロディもよく考えられている。

京浜東北線の東京上野方面行きの電車に乗る。

昨日久しぶりにデイケアで佐久間さんを見かけた。お久しぶりですね、とミユキが声をかけると、そうですね二ヶ月ぶりです、と佐久間さんは答えた。そういえば、私とミユキさんの靴、同じですね、と佐久間さんは言った。どういうことだと思い佐久間さんの足元に目を向けると、本当に自分の靴と同じだった。灰色のニューバランスの574番。まあニューバランスって被るよなと、とほほと思う。ミユキは人とかぶるものを持つのが苦手だった。

 ウォークマンをいじり、曲を変える。ゴールデンボンバーのようなあげあげな曲は意外と入っていない。最終少女ひかさのピカピカを選曲。

いろいろああだこうだと考えているうちに、秋葉原に着いていた。慌てて電車を降りる。